子どもの発達障害の症状や特徴、支援や相談先を徹底解説!チェックリスト付き

子どもの発達が気になる方、発達についての相談先がわからない方、どのような支援や制度があるのかを知りたい方に向けて、分かりやすく解説します。

環境によって、障害は変わる

そもそも『障害』とは、どのような状態のことをいうのでしょうか。
現在、国際的にも『障害』とは『個人』にのみ存在するものではなく、『個』(本人)と『環境』の相互作用によって生まれるものと捉えるのが一般的になってきました。具体的な例をあげて説明します。

眼鏡やコンタクトレンズが存在していない時代では、視力の弱い人は視覚障害者として捉えられてきました。現在は、視力が弱い方でも視力を矯正するものを利用することで、多くの方と同じように生活が送れるようになっています。

また、車いすを利用される方にとって、階段やエスカレーターでは行動制限がかかるため、障害となりえるでしょう。しかし、現在はバリアフリー化が進み、不便を感じることが少なくなってきたと思います。

これらのように、『個』の困難さや生きづらさは『環境』との相互作用によって生まれることが多くあります。
本人にとって、どのような『環境』が適しているのかを考えることが最も大切です。

発達障害(神経発達症)とは?

日本では、発達障害という言葉が定着していますが、世界には発達障害という言葉は存在しません。しかし、2005年に施行された発達障害者支援法において、以下の内容が定義されているため、日本では発達障害という言葉が広く使われるようになりました。

「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの


「発達障害者支援法」第二条・定義より一部抜粋

国際的な定義

精神科領域の2大診断分類体系である、WHOの国際疾病分類(The International Classification of Diseases;以下、ICD)と米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders;以下、DSM)のどちらにも「発達障害」=「Developmental Disorders」という用語は存在していません。
発達障害の定義やどの障害が発達障害と分類されるのかについて、医学はいまだ統一的な見解を得るに至っていません。

①ICD(International Classification of Diseases)  
WHO(世界保健機関)による国際疾病分類で、現在は第11版が発表されており、日本語に訳され ているところです。日本国内では米国精神医学会の DSM(Diagnostic and Statistical Manual of MentalDisorders)(第5版)とともに医療現場で使用されています。ICD 第10版(ICD-10)によれば、代表的な発達障害には、以下のようなものがあります。

F8:会話および言語の特異的発達障害(言語障害) 
学力の特異的発達障害(学習障害)
運動機能の特異的発達障害(発達性協調運動障害)
広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群など)他

F9:小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害
多動性障害(注意欠陥多動性障害
素行(行為)障害(反抗挑戦性障害など)
小児期に特異的に発症する情緒障害(分離不安障害など)
小児期および青年期に特異的に発症する社会的機能の障害(選択緘黙、愛着障害など
チック障害(トゥレット症候群など)
小児期および青年期に特異的に発症する他の行動および情緒の障害(吃音など)他
※下線部は、今後国として正式に使用を始め る予定のICD第11版(ICD-11)では削除される可能性がある内容です。

【第1章発達障害を理解しよう】

②DSM-5
2013年刊行のDSM-5では「神経発達障害Neurodevelopmental Disorders」というグループ名が新たに提唱されています。神経発達障害は、DSM-Ⅳの「通常、幼児期、小児期、または青年期に初めて診断される障害」から、以下の障害群が抜き出されて構成されるようになりました。

*知的障害 (知的発達障害)
*コミュニケーション障害
*自閉症スペクトラム障害Autism Spectrum Disorder(以下、ASD)
*注意欠如・多動性障害AttentionDeficit/Hyperactivity Disorder(以下、ADHD)
*特異的学習障害
*運動障害
*チック障害
*他の神経発達障害
DSM-5は神経発達障害を以下のように解説している。
1.発達期に起源をもつ病態群であり、この障害は通常発達期早期(多くは就学前)に顕在化する。
2.この障害は、個人としての機能・社会的な機能・学業あるいは職業機能に障害を生じるような、発達的欠如(developmental deficits)で特徴づけられる。
神経発達障害には、ICD-10心理的発達の障害の3番目の項目「寛解や再発がみられない、固定した経過であること」に相当する記載がなく、寛解例の存在するチック障害やADHDも神経発達障害に含められている。


【障害保健福祉研究情報システム 「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年4月号】

発達障害(神経発達症)の原因

何らかの要因により、先天的に一部の脳神経の機能に偏りがあることが原因とされています。
しかし、発達障害を引き起こす要因やメカニズムなどは、いまだはっきりと解明されていません。昔は、親の育て方やしつけの問題、愛情不足などと言われてきましたが、それらは誤りです。決して、親の育て方の問題ではありません。

日本の発達障害児の割合について

日本で発達障害(神経発達症)がある・疑いがある子どもは、10人に1人いると言われています。これは、日本人の左利きの割合と同程度です。決して、発達障害の存在は、珍しいものではありません。
以下は、「ASD と子育て実態調査」(博報堂 Pechat 開発チーム・博報堂こそだて家族研究所・LITALICO発達ナビ)の研究結果をグラフにしたものです。(2020年1月時点)

↓グラフの数値を修正
ASD診断された子2.3%&60万人、ASDグレーゾーンの子が5.4%138万人、その他~2.8%72万人、定型発達の子どもは数値はあっているが、漢字が間違っている。

発達障害グレーゾーンとは

グレーゾーンとは発達障害の特徴は見られるものの、診断基準は満たさない状態を表す言葉です。
発達障害グレーゾーンだからこそ、困難さが見えづらいため、必要な支援が受けづらく、理解されにくいといった問題が発生しています。しかし、発達障害の診断がなくても、療育などの受けられる支援もあります。

発達障害の子どもに見られる特徴

ここからは、よりわかりやすく発達障害(神経発達症)の症状や特徴をご説明します。

自閉症(ASD)の子どもによく見られる行動チェックリスト

自閉症(ASD)は先天的な脳機能の異常による発達障害(神経発達症)の1つです。なぜ、脳機能の異常が起こるのか、現在でも原因は解明されていません。これまでの多くの研究から、親の育て方やしつけ方などが原因ではないことがわかっています。
自閉症といっても、その症状は程度や年齢などによって非常に様々で、変化していくものです。1~2歳頃に下記のような行動が見られることが多く、乳幼児健診などで指摘される場合もあります。

注意欠如多動性障害(AD/HD)の子どもによく見られる行動チェックリスト

注意欠如多動性障害(AD/HD)のお子どもの脳では、前頭葉や線条体の機能障害が想定されています。
集団生活の中で、下記の様な行動が目立つようになってくると言われています。ただし、幼児期の子どもにおいては、これらの特徴に当てはまる場合は多く、違いを見分けることはとても困難です。


また、注意欠如多動性障害(AD/HD)には、不注意優勢型と多動/衝動優勢型、混合型が存在します。不注意優勢型は女児に多く、多動・衝動優勢型は男児に多いと言われています。

不注意優勢型
人の話や活動に集中し続けることが難しく、紛失物や忘れ物が多い。外部からの刺激ですぐに注意がそれるなどの特徴が見られます。しかし、自分の好きなことや考え事をしている時には過集中になることがあり、周囲に話しかけられても気が付かないこともあります。

●多動/衝動優勢型
常に落ち着きがなく、無意識に身体が動いてしまうことがある。気持ちのコントロールが苦手で、欲求の制御が難しいなどの特徴が見られます。思いついたことをよく考えずに即座に行動に移してしまう、会話の文脈に関わらず突然自分のことを話しだすことなどがあります。

●混合型
不注意優勢型と多動/衝動優勢型の特徴を併せ持つタイプです。

学習障害(限局性学習症:S-LD)の子どもによく見られる行動チェックリスト

学習障害(限局性学習症:S-LD)とは、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されています。しかし、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではありません。
また、『聞く』『話す』『読む』『書く』『計算(推論)する』などの特定能力に困りがあるものの、全般的な知的発達に遅れはありません。

人によって症状の表れ方が様々であり、気づかれにくいことも多く診断がとても難しい障害です。そのため、小学校入学後の学齢期において、困難が生じることが多くあります。

発達が気になる子が受けられる支援

発達が気になる子どもへの支援として『療育』というものがあります。

療育とは

療育(児童発達支援)とは、障害のある子どもやその可能性のある子どもに対し、個々の発達の状態や障害特性に応じて、今の困りごとの解決と将来の自立と社会参加を目指し支援をすることです。
児童発達支援には、主に自治体が運営している「児童発達支援センター(療育センター)」と民間企業が運営する「児童発達支援事業所」があります。
また、「児童発達支援センター」には福祉型と医療型、「児童発達支援事業所」には児童発達支援事業所と放課後等デイサービスがあり、それぞれ特徴や施設の雰囲気、受けられる支援に違いがあります。
地域によっても、事業所の数などに差がありますので、市区町村の障害福祉課などに問い合わせてみましょう。利用するには、通所受給者証が必要となります。
→詳しくは【児童発達支援ガイドライン 厚生労働省】

未就学児(~6歳)が受けられる支援

●支援内容

本人への発達支援
通所にあたり、個々のニーズに合わせた個別支援計画書を作りその計画に基づいた指導を行うことで、子どもが将来自分らしく、日常生活や社会生活を過ごせるように支援をします。

移行支援
事前に保護者から、子どもの不安や困り事を面談などを通しアセスメント(分析)を行います。地域の保育園・幼稚園に指導員が訪問、園や事業所で必要な支援を共有し、子どもの成長や自立を促します。

家族支援 
ご家族が抱える子育ての悩みや相談を受け、心理的支援などを行います。

地域支援
子どもが事業所を併用している場合など、取り巻く環境に属するスタッフが集まり、支援の方法に差異がないよう共有し連携をとります。

①児童発達支援センター(療育センター)
施設内には、専門職の方が在籍していることも多く、専門性に特化した支援や助言、援助を受けることができます。
また、地域の障害児やその家族への支援・相談、子育てに悩むご家族に向け一部施設の開放を行っているところもあります。

『福祉型』
地域の障害児を対象としていることが多く、子どもに必要な日常生活スキル(動作や技能、集団生活への適応訓練)を行なっています。
また、保育園・幼稚園のように通所で通う施設だけでなく、ご家族の悩みにも対応しています(相談支援)。その他、施設によっては「保育所等訪問支援」というサービスを提供しており、保育所等に通うお子さまに対し専門スタッフが実際に集団生活が行われている現場に足を運び、間接支援や直接支援を行うこともあります。

『医療型』
児童発達支援および治療を行う施設です。医療型児童発達支援センターには、看護師や理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの多くの専門スタッフがいます。

②児童発達支援事業所
対象の子どもやその家族に対する支援・援助を行う療育施設です。児童発達支援センターとは違い、利用時間や活動内容もそれぞれの事業所によって様々です。
個別や小集団での療育、音楽療法や運動療法など様々な事業所があります。

就学(6~18歳)以降で受けられる支援

放課後や学校の長期休暇中に利用する施設です。
事業所の中で、個々のニーズに合わせ社会生活を送るために必要なスキルの獲得や学校生活で必要な学習支援、コミュニケーション能力の向上を図るソーシャルスキルトレーニング(SST)を行います。児童発達支援事業所同様、施設ごとに活動内容や支援の提供時間は様々です(フリースクールのような事業所もあります)。
また、学校から事業所まで、事業所での活動終了後自宅までの送迎がある場合もあります。

●支援内容

自立と日常生活を支援するための活動
子どもの発達段階に合わせ、学校や家庭、集団生活の中で必要とされる動作やコミュニケーション能力向上の為の支援を行います。

創作活動
季節や環境の変化に興味を持てるよう支援します。日常生活の中で自然にふれる機会を多く設けることで、表現する喜びや感動を体験できるよう支援を行います。

地域交流の機会の提供
社会経験の幅を広げることを目的とした、様々な学習体験・交流活動を設けます。

余暇の提供
子ども自身が安心できる場所でリラックスして過ごすことで、気持ちのコントロール方法を獲得するなど、様々な経験を積んでいけるような活動や支援を行います。

気になることがあった時の相談先

お住まいの地域や環境によって、相談しやすい施設や施設名称が違います。まずは、お近くの相談先を以下の中から探してみましょう!

  • 地域保健センター
  • 児童相談所
  • 子ども家庭支援センター
  • 児童発達支援センター
  • 市区町村 障害福祉課(名称は市区町村ごとに異なります)
  • 病院(小児精神科・児童精神科など)

また、定期健診(1歳半健診など)で気になることがあれば個別に相談することも可能です。
お住まいの地域に、どのような相談先があるのか聞いてみましょう。

発達検査・知能検査

子どもの発達が気になる場合、年齢やニーズに合わせて、発達検査や知能検査を受けることができます。
発達検査を受けたからといって、すぐに診断が出るわけではありません。子どもの得意・不得意を知りたいと思った時、調べてみたいと思った時には、主治医などと相談してみましょう。

代表的な発達検査

新版K式発達検査
適用年齢:0歳~成人
1951年に京都市児童院で考案され、2002年に現在のものに改定されました。発達の遅れや偏りを多面的に評価するもので、検査の結果は発達障害の診断や療育などの場で活用されています。新版K式発達検査では、発達水準を年齢で示した発達年齢(Developmental Age:DA)と実際の年齢の比である発達指数(Developmental Quotient:DQ)によって表され、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域から評価します。子どもにとって遊びと感じられるような課題で構成されており、子どもの自然な行動が観察できることが特徴で、机に向かって集中することが難しい子どもにも実施することが可能です。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。→詳しくは【心理検査の種類と目的とは?】

代表的な知能検査

①田中ビネー知能検査V
適用年齢:2歳~成人
心理学者の田中寛一によって、1947年に出版された日本のビネー式知能検査の一種で、2005年に改訂版田中ビネー知能検査Vとして出版されました。2歳~14歳は知能指数(IQ)と精神年齢(MA)が算出されます。14歳以上は偏差知能指数(DIQ)で算出し、「結晶性領域」「流動性領域」「記憶領域」「論理推理領域」の4領域で表わせられます。また、1歳以下の発達を捉える指標が作成されていることが特徴です。
特徴として、問題が年齢尺度によって構成されているため、通常の発達水準と比較することが容易になっている点があげられます。また、各問題は、「思考」「言語」「記憶」「数量」「知覚」などの問題で構成され、子どもが本来の力を発揮しやすいよう、日常場面に即した問題で構成されています。また、問題の通過・不通過以外にも、検査時の行動観察の記録を記入するアセスメントシートがあり、点数からよみとりにくい子どもの様子も把握できるようになっています。

②WISC-Ⅳ 知能検査
適用年齢:5歳0ヶ月~16歳11ヶ月
WISC-Ⅳは1998年にアメリカで発売以来使用されていたWISC-IIIの改訂版です。全15の下位検査(基本検査:10、補助検査:5)で構成されており、10の基本検査を実施することで、5つの合成得点(全検査IQ、4つの指標得点:言語理解指標、知覚推理指標、ワーキングメモリー指標、処理速度指標)が算出されます。このように、全般的なIQだけでなく、それらの合成得点から個人内での能力のばらつきがわかりやすいということがWISCの特徴です。これにより、お子さまの支援が必要な領域を明らかにしたり、強みを把握することができます。これは、支援計画を立てるときや、日々の生活をサポートする方法を考える際に活用することができます。

最後に
いかがでしたでしょうか。子供の発達が気になる方、子育てに悩んでいる方、相談したいけど相談先がわからない方、どのような支援や制度があるのか知りたい方に向けて、現在の不安が少しでも解消できれば幸いです。自分の子供が発達障害(神経発達症)なのではないか、どう育てていけばいいのだろうか等、この先の子育てに多少なりとも不安がある状態の方もいらっしゃるかと思いますが、そのような気持ちが芽生えることは当たり前の感情です。自分を責めることはありません。お子さんのために学ぼうとしている姿勢が素晴らしいことです。
この先のことを是非考えるきっかけにしてください。